廊下から近づいてくる
これは今から数十年前、俺が小学1、2年生の頃経験した話です。
その当時の我が家は平屋で、住宅の前の道路は車同士ですれ違いが出来ないくらいの狭い道路でした。
家の立地は駅から歩いて10分くらいの所で、そこそこ便利なんですが地方都市の郊外で昼間の人通りも余り無く、夜になれば尚更通る人もなくなります。
その頃の家の間取りは、玄関から入って右に行くと応接間が有って、その隣にトイレが有り、玄関の踊り場を挟んで正面に台所、玄関の踊り場から廊下をちょっと行くと10畳間になっていて、ここが家族4人の寝室になっていました。
当時の家族構成は小学1,2年の俺、小学校に上がるか上がらないかの弟、30代の父母で、その夜もいつもと変わらず家族4人仲良く寝室で寝ていました。
夜の10時過ぎ、いや11時過ぎなのかなあ、父母も弟も完全に寝てるんだけど俺だけ、眠れずにいたんだけれど玄関から人がいるような音が聞こえてきた。
玄関から5、6メートルなんだけど、明らかに人がいる気配がする。
何で人がいるんだろう、何してるんだろうって、不思議っていうより怖かった。
その人間は暫く(どのくらいの時間なのか分かりませんが、かなり長く感じた)玄関に留まっていて、気配だけが伝わって来る。
そしてその人が玄関から廊下に上がって、少しづつ俺が寝ている寝室に近づいて来る。
ミシリミシリっていう足音を鳴らして、ゆっくりとこっちに近づいて来る。
それが人だっていうのは分かるけど、何なのか分からない。
どのくらいの時間が経ったんだろう、凄く長く感じたのを今でも憶えています。
そのちょっとづつ近づいて来た足音が、俺が寝ている寝室の障子の引き戸の前まで来たのが分かりました。
只々怖かったけど、子供の俺にはどうする事も出来ない。
そして、遂に足音のあるじが俺の耳元まで、そう感じた。
無茶苦茶に怖かったのは、今でも憶えている。
その感覚も忘れられず、あれから数十年経った今でも昨日の事のよう。
その後、どうなったかって?
寝てしまいました。
我ながら、良く寝られたとおもうけど、その後の記憶は無く朝を迎えました。
翌朝すぐに母親に、言いました。
昨日の真夜中に遭った事を。
そんなの、家の前の道路を歩いている人の足音だったんだろうてのが、母親の答えでした。
まさか真夜中に玄関から入って、人の家の寝室まで無断で入って来る人間なんている訳ないし。
そう考えるしかなかったんでしょう。
今思い出して見ても、一つだけ言える事があります。
あれは人ではない、世の中わからない事ってのがあるんです。
今日は、何十年経っても分からない話でした。

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